訓練・活動 · 解説

住民参加型の消防団訓練を「見学」で終わらせない 伊賀市の事例から考える5つの設計項目

伊賀市の消防団総合訓練と国の訓練方針から、住民が判断・行動できる5項目を整理。新地町の2026年10月21日公表の実施報告を踏まえ、団の演習と住民の避難・避難所設営をつなぐ確認、会場をまたぐ終了条件の記録を追加しました。

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こんな方へ:住民参加型訓練を企画する消防団員、自治会・学校・事業所の担当者、自治体の防災担当者

住民参加型の消防団訓練は、放水や救護を見せるだけでは、災害時の判断や連携を十分に確かめられません。伊賀市が2026年10月1日に公表した消防団総合訓練は、地域ごとに異なる内容を用意し、住民や民間事業所との連携も組み込んでいます。この事例と国の令和8年度総合防災訓練大綱を照らし合わせ、地域で訓練を企画するときに先に決めたい項目を整理します。

伊賀市は地域ごとに訓練内容を変えている

伊賀市は2026年10月1日、住民参加型の消防団総合訓練を公表しました。主会場では11月15日に、枯草火災と林野火災への対応、民間事業所との連携、負傷者救護、ドローン偵察、指揮連携を実施する予定です。地区会場では、応急手当、放水、避難、避難所運営ゲーム、消火栓の取り扱い、風水害対応など、地域ごとに異なる内容が組まれています。 [1]

編集部の考え方ここから持ち帰れるのは、訓練項目の多さではなく、全地区に同じメニューを当てはめていない点です。地域の災害リスク、会場、参加者、消防団が確かめたい連携に合わせて、内容と規模を選び直す考え方が参考になります。

訓練の目的は、上手に見せることではなく弱点を見つけること

中央防災会議の令和8年度総合防災訓練大綱は、訓練の目的として、組織体制の機能確認、関係機関の役割分担と連携、計画の弱点や課題の発見、住民一人一人が取る行動を考える機会づくりを挙げています。また、訓練を見せることだけを目的にせず、実際の判断と行動を伴う方式にし、終了後は参加者や見学者の意見も使って評価するよう求めています。 [2]

消防庁は、消防団が自主防災組織や住民への訓練指導、防災知識の普及啓発で地域のリーダーシップを取ることを期待しています。同時に、町内会、学校、事業所、NPOなど地域の多様な組織と連携することが有効だと説明しています。 [3]

編集部の考え方消防団がすべてを実演し、住民が見て帰る構成では、説明会としては成立しても、連絡や判断の詰まりは見つかりにくくなります。参加者が少なくても、誰が情報を受け、何を判断し、どこへ伝えるかを一つ実際に試す方が、次の改善につながります。

企画前に決めたい5つの設計項目

編集部の考え方次の項目は全国共通の手順ではなく、地域の訓練計画に抜けがないかを確認するための質問です。危険を伴う実技の方法は、自治体や消防機関の指導、安全管理計画、使用する資機材の正式な手順に従ってください。

  • 住民、自治会、学校、事業所、消防団のうち、誰が見学者ではなく判断・行動する参加者ですか。
  • 地域のハザードマップや過去の課題から、今回一つ確かめる災害リスクと場面を決めていますか。
  • 情報の受け渡し、避難誘導、救護、資機材、記録について、組織をまたぐ担当と連絡先が決まっていますか。
  • 子ども、高齢者、障害のある人、外国人、初参加者が内容を理解し、安全に参加できる案内と役割がありますか。
  • 終了後に誰が意見と記録を集め、いつまでに計画、連絡網、協定、次回訓練へ反映しますか。

参加者を増やす前に、参加条件を具体的に伝える

令和8年度総合防災訓練大綱は、幅広い層が参加できるよう、実施時期、場所、内容、申込方法を具体的に示す広報を求めています。さらに、女性の視点を取り入れ、高齢者、障害者、乳幼児、妊産婦、外国人など要配慮者本人の参加を得た訓練に努めるとしています。 [2]

編集部の考え方『どなたでも参加できます』だけでは、服装、所要時間、移動、雨天時の扱い、見学だけでもよいかが分からず、参加を迷う人が残ります。広報では、対象者、集合と終了の時刻、体験できる内容、見学のみの可否、配慮が必要な場合の相談先を分けて示すと、住民と運営側の双方が準備しやすくなります。

多団体が集まる訓練は、担当表の次に引継ぎを確かめる

神戸市が2026年10月13日に発表した東灘区総合防災訓練は、11月29日10時から12時まで、本山第一小学校で実施予定です。近隣地域の住民約200人を想定し、避難者受け入れは防災福祉コミュニティ、消火・防火資機材の訓練は消防団、応急処置は宮地病院、車いす操作体験は社会福祉協議会と婦人会など、内容ごとに担当団体を示しています。実施結果ではなく、発表時点の予定です。 [4]

編集部の考え方この発表から各団体の担当は分かりますが、受付方法や会場内の案内、団体間の引継ぎの詳細までは確認できません。他地域が参考にするなら、同じ団体や体験をそろえることより、参加者が次の担当者へ迷わずつながるかを確認するのが先です。以下は神戸市の運用実績ではなく、企画担当者向けの提案です。

編集部の考え方打ち合わせでは「場面/最初に対応する担当/次に引き受ける担当/伝える内容/受け取ったことの確認/担当不在時の相談先」を一行にします。架空の記入例なら、「受付を終えた参加者の次の体験案内/受付担当/会場案内担当/希望する体験と会場内の場所/案内担当が引受けを返答/運営本部」です。実際の人数、動線、担当範囲は会場と関係団体で決め、本人に関する不要な情報を共有しない形にします。

編集部の考え方当日は、担当者が説明できたかだけでなく、参加者が案内を理解し、次の担当者へつながったかを観察します。複数の窓口で同じ説明を繰り返した、待ち場所が分からなかった、といった点を記録すれば、終了後の振り返りで案内表示と担当分担のどちらを直すべきか判断しやすくなります。救護や資機材の実務操作を、このメモだけで決めるものではありません。

雨天時は会場だけでなく、残す体験と案内先を決める

東灘区の発表では、晴天時はグラウンド、雨天時は内容を一部変更して体育館で実施し、警報発令時など荒天の場合は中止の可能性があるとしています。伊賀市でも、地区によって雨天時の会場や開始時刻の扱いが異なります。いずれも、その開催地域・会場の条件です。 [4] [1]

編集部の考え方自分たちの訓練では、屋内へ移す場合に継続する内容、見送る内容、参加者への伝え方を事前にそろえます。「誰が判断するか/いつ確認するか/どの公式案内へ掲載するか/受付・案内担当へどう伝えるか」を主催者に確認し、広報と当日の担当表に同じ内容を反映します。未公表の判断時刻や中止基準を推測して案内せず、変更があれば元の募集案内も更新する、という準備が必要です。

同じ日の訓練を、避難先での受け入れまでつなげる

新地町が2026年10月21日に公表した報告によると、10月18日に駒ケ嶺小学校校庭で消防団の秋季演習が行われ、団員140人が参加しました。同日、城内・上ノ町・新町・駒ケ嶺の各地区では、大雨で立田川が決壊するおそれがあるという想定の避難訓練を実施。住民は駒ケ嶺公民館へ避難し、その後、自主防災組織による避難所設営訓練が行われました。10月21日は記事の更新日で、訓練の実施日ではありません。 [5]

編集部の考え方この報告からは、団の演習と住民の避難、避難先の設営が同じ日に実施されたことが分かります。ただし、団と住民側がどの時点で何を連絡したか、全員の到着をどう確かめたか、連携上の課題が何だったかは記載されていません。『同じ日に行った』ことだけを、連携が検証できた証拠にしないのが読み方の要点です。

編集部の考え方自分たちの企画では、各担当の作業表に加えて『前の段階が終わったと誰が判断し、次の担当が何を受け取れば開始できるか』を一行ずつ合わせます。消防団の演習終了、住民の訓練会場到着、受付後の次の案内は別の終了条件です。団の予定時刻だけで住民側も終了したと扱わず、各担当が確認した状態を運営本部で照合できるよう相談します。これは地域の正式な訓練計画を具体化するための提案で、実災害時の出動・避難判断を置き換えるものではありません。

編集部の考え方架空の記録例なら『場面:訓練参加者が受付を終える/前担当:受付/受け手:会場案内/終了の合図:受付担当から引継ぎ/受け手の確認:次の活動場所を案内できた/残った点:案内担当が不在の時間があった』とします。氏名や健康情報をこの改善メモへ転記せず、実際の参加者確認に必要な記録は主催者の決めた管理方法で別に扱います。終了後は人数の総計だけでなく、誰がどの段階で待ったかを整理すると、担当配置と案内のどちらを直すか話し合えます。

  • 団の演習と住民側の訓練について、会場・担当・終了条件を分けて書いたか。
  • 前の担当から受け手へ伝わったことを、どの記録で確かめるか決めたか。
  • 未確認・待機・担当不在の場面を、次回の改善担当と期限につなげたか。

訓練後の一枚を、次回まで残す

令和8年度総合防災訓練大綱は、訓練後に問題点を分析し、参加者の意見交換や見学者・外部有識者の意見を通じて客観的に評価した上で、必要に応じて防災マニュアル、協力協定、タイムラインなどを見直すよう示しています。 [2]

編集部の考え方反省会を感想だけで終わらせず、『想定どおりだったこと』『詰まった連絡や判断』『担当者』『直す期限』『次回に再確認すること』を一枚にまとめます。参加人数や実施写真だけで成果を判断せず、訓練で見つけた弱点が一つでも次の計画に反映されたかを追うと、毎年同じ訓練を繰り返す状態を避けやすくなります。

出典と確認日

  1. 消防団総合訓練伊賀市 · 資料の日付 2026年10月1日 · 確認 2026年10月23日
  2. 令和8年度総合防災訓練大綱中央防災会議 · 資料の日付 2026年7月14日 · 確認 2026年10月23日
  3. 災害時の活動総務省消防庁 · 確認 2026年10月23日
  4. 2026年度東灘区総合防災訓練の実施神戸市 · 確認 2026年10月23日
  5. 令和8年度新地町消防団秋季演習及び防災避難訓練(2026年10月21日更新)新地町 · 確認 2026年10月23日

あわせて確認したい基礎知識

この記事の更新履歴
  • 2026年10月3日:伊賀市、中央防災会議、総務省消防庁の一次資料を照合し、住民参加型訓練を企画するための5項目として初版を公開。
  • 2026年10月16日:神戸市の10月13日発表を照合し、多団体の引継ぎメモ、参加者の案内確認、雨天変更時の周知手順を追加。既存URLと初回公開日時を維持。
  • 2026年10月23日:新地町の10月21日公表・10月18日実施の報告を一次資料で照合。同日開催と連携検証を分け、団の演習から住民の避難先受付・設営へつなぐ終了条件と記録例を追加。URL・topicKey・初回公開日時を維持。